里菜は強い女性だった。
決して自分の弱さを他人には見せなかった。
恋人である僕にも・・・・。
そんな里菜でも病魔には勝てなかった。
里菜は死んだ。
僕を残して・・・・。
里菜とは大学で出会い、もう三年も交際を続けていた。
そしてそろそろいい頃だろうと、思い切ってプロポーズして婚約までこぎつけていた。
今考えるとこの時が今までで一番の時間だった。
この時の僕と里菜は互いに恋をしていた。
婚約が決まり、二人の両親を尋ねようとした矢先、里菜は倒れた。
病院にかつぎ込まれた里菜は、死ぬまでの間に数分目を覚ました。
その間に彼女は僕に言葉を残した。
「聞いて、真一。
もし私が死んだら、私に遠慮せずに新しい恋人を探すのよ。
真一はさびしがりでおっちょこちょいだから、私みたいな面倒見のいい人探すのよ。
私はもう十分真一と恋をしたからいいの。
私は真一と今まで一緒にいれて幸せだった・・・・。」
これが僕に残した最後の言葉だった。