今更になって溢れ出した感情。
俺はあほや。
ふと沙代子を見ると
アイツの左手の中指には
俺のと同じシルバーリング。
そぉ言えば沙代子は言うてた。
「あたしな,結婚するまで左手の薬指に指輪せぇへんって決めてん。」
俺が「何で??」って聞いたら
「だって左手の薬指は史規専用やもん。
史規との結婚式まであけとくねん♪♪」って
嬉しそうやったわ。
そんな約束さえも
俺は果たしてやれんかった。
そう思うとまた涙が溢れた。
時は経ち、またあの季節が来た。
沙代子が死んで一年経った。
「来年もあたしの誕生日に花火見に連れてってな。」
その言葉が脳裏に浮かんだ。
今日は沙代子の18回目の誕生日。
どないしよ...
教室の外を眺めながら考えてた。
「史規、どないしてん??」
親友の裕介が言う。
コイツには沙代子がいなくなってから
よぉ助けてもらった。
「今日な、沙代子の誕生日やねん。」
「なら、花火見に行かな。」
裕介の言葉に驚いた。
「お前、沙代子チャンと約束したんやろ??
きっと沙代子チャンも待ってると思うで。」
「せやけど...」
正直なとこ
俺はまだ立ち直ってない。
花火なんか見たら
沙代子がおらんコトを実感するだけやと思う。
「沙代子チャンとの約束破るんか??」
「えッ...」
「沙代子チャンはお前の大切な人やろ??
そんな人との約束を破るんか??」
裕介の言葉は俺の心に突き刺さった。
「俺、行くわ。
沙代子に会ってくる。」
俺は決めた。
沙代子に会いに行く。
「史規、これ。」
裕介は財布から2000円を出した。
「これで沙代子チャンに花でも買ってやってや。」
「おい、裕介!!!!」
裕介は振り向きもせずに帰って行った。