族長はどっかりと大きなイスに座った。
「それで、話というのは?」
「はい、今マルーンは食料不足で…このままでは村人は飢え死にしてしまいます…」
「それで?」
「それで…食料の提供をしてほしいのですが」
「そうか…食料不足ねぇ…残念ながらこの村も食料不足でのぉ」
フェーンは神の住む村、村で作物を作らずともまわりの村から食料が届く、最も豊かな村だ。
食料不足なわけがない。
現に村には食料が溢れ活気づいていた。
だがそんなことを言えるはずもなかった。
しかしリオンもそれで引き下がるわけにはいかなかった。
「無理を承知でお願いします!どうか…マルーンをお救いください…」
「困ったのぉ…まったく…ずうずうしいやつらじゃ…」
そういうと族長は立ち上がりリオンの肩に手を回しいやらしく体を撫で始めた。
「そうじゃのう…お主にこの家で働いてもらおう…奴隷としてのぉ…それなら交渉成立じゃ」
リオンは体を震わせ涙を流しながら恐怖と屈辱に必死に耐えていた。
「おい、じじいその手を離せ……」
ネロの怒りはすでに限界に達していた。
「あぁ?今何と言ったんじゃ?」
「…手を離せって言ったんだよ…!神にびびってるだけのお前らにこれ以上好き勝手させるわけにはいかない…」
「ネロやめて!…それで村が助かるんなら私…奴隷でも何でもする…」
「この村には交渉をしに来たんだ。お前を売りに来たんじゃない。」
「マルーンが調子に乗りおって…門番、こいつらを殺せ」
族長がそういうと門番が中に入ってきた。
「リオン!行くぞ!」
ネロはリオンを無理やり立たせると門番を押し倒し外へ逃げた。