携帯白書 (1)

梨希  2006-03-18投稿
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「・・・」

「ど〜も。アンタが夏菜?」

「・・・何。ここ何処?」

「携帯の中。」

「・・はぁ?」

* * * * * * * * * * * *

それは1時間前までさかのぼる。
夏菜は中学校の授業が終わって帰宅。
自分の部屋に閉じこもり、机の椅子に腰掛けたら
すぐさま携帯にかじりついていた。

<<あ〜あぁ。ダルい。やる事も無いし暇。>>

待ち受け画面にそう打つ。
もちろん文字は出ない。出そうとも思わない。
ただ、ボタンをプッシュする「カチ カチ 」という音が部屋に木霊する。
意味もなくその打っただろう文字を変換する。
その作業を終えた夏菜は大きな溜息を1つついた。

『君にだよ。君にだよ。』

その時携帯がなった。ミッキーマウスの声で自分に呼びかける。
馬鹿馬鹿しい着メロだとは思うが、
自分の虚しい心を癒す1つの方法でもあった。
夏菜は今着いたばかりのメールのタイトルに目を通す。

『携帯住民希望者募集中』

漢字ばかりで一瞬意味不明だったが、
本文を読むとさらに頭がこんがらがった。

『現在、携帯の中にある世界に住みたい、
 そちらの世界の人間を募集しております。
 もし住んでみたい方がいらっしゃったら
 <コチラ>をプッシュしてみてください。』

夏菜は無言で<コチラ>をプッシュしてみた。
悪戯だとしか思わなかったからだ。
ただ、どうなるか見たかった。という好奇心もあるだろう。
冷静でありながら、夏菜の心音のスピードは確実に早くなっていた。

「!!」

携帯から銀色の光が放射される。

「何――――― ・・・」

夏菜は、消え、座っていた椅子だけが、かすかに揺れていた。

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

「・・・」

「ど〜も。アンタが夏菜?」

「・・・何。ここ何処?」

「携帯の中。」

「・・はぁ?」


〜続〜

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