「・・・」
「ど〜も。アンタが夏菜?」
「・・・何。ここ何処?」
「携帯の中。」
「・・はぁ?」
* * * * * * * * * * * *
それは1時間前までさかのぼる。
夏菜は中学校の授業が終わって帰宅。
自分の部屋に閉じこもり、机の椅子に腰掛けたら
すぐさま携帯にかじりついていた。
<<あ〜あぁ。ダルい。やる事も無いし暇。>>
待ち受け画面にそう打つ。
もちろん文字は出ない。出そうとも思わない。
ただ、ボタンをプッシュする「カチ カチ 」という音が部屋に木霊する。
意味もなくその打っただろう文字を変換する。
その作業を終えた夏菜は大きな溜息を1つついた。
『君にだよ。君にだよ。』
その時携帯がなった。ミッキーマウスの声で自分に呼びかける。
馬鹿馬鹿しい着メロだとは思うが、
自分の虚しい心を癒す1つの方法でもあった。
夏菜は今着いたばかりのメールのタイトルに目を通す。
『携帯住民希望者募集中』
漢字ばかりで一瞬意味不明だったが、
本文を読むとさらに頭がこんがらがった。
『現在、携帯の中にある世界に住みたい、
そちらの世界の人間を募集しております。
もし住んでみたい方がいらっしゃったら
<コチラ>をプッシュしてみてください。』
夏菜は無言で<コチラ>をプッシュしてみた。
悪戯だとしか思わなかったからだ。
ただ、どうなるか見たかった。という好奇心もあるだろう。
冷静でありながら、夏菜の心音のスピードは確実に早くなっていた。
「!!」
携帯から銀色の光が放射される。
「何――――― ・・・」
夏菜は、消え、座っていた椅子だけが、かすかに揺れていた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「・・・」
「ど〜も。アンタが夏菜?」
「・・・何。ここ何処?」
「携帯の中。」
「・・はぁ?」
〜続〜