ループ?

 2007-10-07投稿
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「泣きたかったら泣いてもいいよ」

彼は私の肩に手を乗せて、自分のほうへと引き寄せる。
ああ、君は優しい。
でもね、駄目だよ。

「大丈夫」

私は彼の手を振り払って、ピースした。
そんな心配そうな顔をしないでよ。

「本当に大丈夫だから」

今できる最高の笑顔で言った。
そして私は、彼がなにかを言いだす前に「じゃあ、また明日学校でね」と言い残して、走り去った。
きっと優しいあなたの事だから、まだ心配そうな顔をしているでしょう。
ごめんね。
涙を拭いながら走る私の隣をゴスロリの子が通った。その子も泣いていた気がした。
メールの着信音が鳴る。
無視して走った。
途中、小さな段差につまづいて転けた。

「…あは。……はは」

ハイヒールで全力疾走するのは無理があったかな。
ひねった足をさすりながら思った。

「大丈夫ですか?」

50歳くらいの男の人が声をかけてきた。
しっかりとスーツを着こなし、紳士といった感じだった。

「…あっはい。すいません」

なるべく泣いた顔を見られないように、俯いて返事をした。

「そうですか?でわ、これだけどうぞ」

そう言うと、私の右手にハンカチを握らせた。
強制的ではなかった。
ハンカチをくれると、男の人は歩いていった。
ハンカチは高級そうだったが、使いこまれた感じがした。
みっともなくハンカチを握りしめたまま泣いた。

今日ぐらいは泣いてもいいでしょう。
明日からは笑っているから。
君の隣に彼女がいても。

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