法令。
それはいとも簡単に崩されてしまうもの。
破られてしまうもの。
乱されてしまうもの。
それらを実行するのは、よもや現代に人間だけではなくなった。
「ターゲットロックオン…」
「おいおい、俺らは暗殺者とかじゃねぇんだから…いい加減その言い方やめろよ」
「別に良いだろう?お前には関係の無い話だ」
「人を巻き込んでおきながら…良く言えたもんだぜ」
法を破るものがあれば守るものがある。
それでこの世界は成り立つのだ。
「行くぞ、セツ」
「02…無茶はすんなよ」
その秩序の名は…
「いっぺん…逝っとくか?」
幽霊警察。
幽霊警察25時
〜StartDush〜
真夜中。
目が覚めた。
外は電灯だけが照らすほの暗い世界。
「あー…何か腹減ったかも…」
窓を開けっ放しだった為、吹き込んで来る冷たい風で完璧に目が冴えてしまった。
そのままベッドの中に居たところで寝付けやしないのだ、そう思い俺は静かに家を後にした。
俺はセツ。
本名・久鏡刹那。
いたって普通の男子高校生。
家族構成は両親と妹。
後…
「寒っ…まだ9月なのに…」
俺が幼い頃に行方不明になった兄さんの5人だ。
兄さんは俺と父親と3人で出掛けた時、街の中で消えた。
呼び出しアナウンスと父親の叫ぶ声が引っ切り無しに響いていたのは鮮明に覚えている。
もう一つ。
『お前は頭が良いから…俺がいなくなってもいつか見つけてくれるだろうな』
意味の分からない兄さんの台詞も。
当時、俺は7歳。
兄さんは17歳だった。
だから俺の世界は兄さんで回っていたと言っても他言ではない。
「本当…10年も何処に行ってんだよ…」
兄さんは帰って来ない。
いつまでもいつまでも帰りを待っているのはもはや俺だけらしく、他の奴等は皆家出だなんて言って片付けてしまう。
しかし実質、あの日は一切兄さんは荷物を持っていなかったのでそれは無理だ。
家にも帰っていないらしい。
山奥でもない人で賑わう街中で1人も証言者が出てこないのも有り得ない話だ。
17歳の高校生、1人位見ていてもおかしくない…。
「もう、俺も兄さんと同い年になっちまったなぁ…」
そう、もう俺も17歳。
…10年の月日が経った。