「千明、最初に言っとくけどくじ引きだから何が当たるかは分かんねぇよ。それにくじ引き屋自体もいつ開いてるか分からないってよ」
既に千明の頭の中は女子高生でいっぱいだ。
勇太の声が聞こえるはずもなかった。
「着いた。この辺らしいけど…」
そこは杉の木がうっそうと生えている神社の近くだった。
放課後ということもあり薄暗く少し不気味だ。
「あぁ〜無いな!残念!帰るか千明!」
勇太は振り返りもと来た方へ歩きだした。
「いないぞ…」
低くうなるような声がして勇太は恐る恐る振り返った。
「千明…?」
「おい!!女子高生はどこだ!!!!」
千明はいきなり勇太の胸ぐらを掴んできた。
「女子高生はいないだろ…!ていうかいたとしてもくじ引き屋だし!そもそもくじ引き屋に会うこと自体難しいって言ったじゃん!」
勇太は必死に抵抗したが思った以上に千明の力は強かった。
勇太は渾身の力を振り絞り千明の手を振りほどいた。
「バカ野郎!千明はいつも俺の話なんて聞いちゃいない!頭の中はいつも女子高生と紺のソックスばっかりだ!そんなに女子高生が好きなら女子高生になって死んじゃえ!!」
勇太が必死に発したセリフは意味が分からないセリフだった。
勇太は千明を傷つけてしまったのではないかという気まずい気持ちと意味の分からないセリフを発してしまった恥ずかしさで頭の中が真っ白になり逃げるように去っていった。
千明が正気に戻ったのはその後すぐだった。
そして千明は気づいた。
「なんてこった……勇太…」
千明はアスファルトに手をつきうなだれた。
「……………財布忘れた…」