現場検証がある程度終わり、木戸と阿部は署に引き返していた。
もちろん運転は部下の阿部だ。
「凶器、一体どこにいったんですかね?」
この状況を打開しようと阿部が話を持ち掛けた。しかし、木戸は答えない。
シカトかよ・・・もしかして木戸さんって気難しい?そう思って再び話掛ける、話題を変えるためだ。
「あっ、あのー・・・木戸さん?」
「なんだ。」
そう言った木戸は少し不機嫌そうだった。
「あのぅ、今何時ですか?」
「もう10時過ぎだよ。」
「そうですか、あのぅー」
「なあ、阿部くん?」
「な、何ですか。」
阿部は突然の質問に少し驚いた。
「気付いたんだが、さっきから『あのぅ』が多くないか?」
「すいません。」
「いや、別に怒っている訳じゃないよ、ただ考え事をしていただけなんだ。」
「ていうことは、やっぱりさっきの事件のことですか?」
「そうじゃないんだ・・・」
「じゃあ、何ですか?」
「それは・・・」
そして木戸は一瞬ためらって、口を開いた。
「・・・昼飯どこにする?」
「はあ?」
阿部は呆れ返ってしまった。