10月4日
午後9時30分
「昨日午後1時過ぎに発生した反政府テロ組織『黒神の使徒』による品川プリンセスホテルの立て籠もり事件は……」
カーラジオから昨日の事件のニュースが聞こえて来る。
龍華はもう朝から耳にタコができる程聞いているニュースなのでチャンネルを変えた。
「品川プリンセスホテルの立て籠もり事件は軍部庁の特別討伐執行部鎮圧課の突入に…」
「クソッ!!
なんでどこもこれしかやってないんだよ!!」
自分達が解決した事件をこの様に聞くとなんだか複雑な気分になった。
「事件は解決したのに渋滞は進まないねぇー」
隣りの助手席には私服姿のエルファがイライラする龍華とは対象的に冷ややかに言った。
「なんで平日なのにこんなに混んでんだよー」
彼等は今日は非番(執行部は基本的に交代制になっている。)なので平日であるがこうして私服姿である場所へと向かっているのだった。
「前に行ったのは一ヶ月前だったけ?」
「あぁ…
あいつら元気にしてるかなー?」
「そりゃあ元気… ていうかあいつが元気じゃないワケないだろ?」
「そうだな…」
10時40分
東京都 秋留野市某所
「お嬢様、幸村様ご到着いたしました。」
黒いピカピカのリムジンが何の変哲もない駐車場に停車した。
「ご苦労様。
扉は自分で開けるわ。」
黒いスーツ姿の運転手は麗奈のドアを開けようと外に出ようとしたが麗奈はそれを制止した。
「帰りは3時頃になると思うから。」
「はい。」
「運転さん。ありがとうございました〜」
幸村と呼ばれたショートヘアーの少女は運転手に礼を言って車から降りた。
二人は年頃の女の子らしいオシャレな服装で両手にお菓子やヌイグルミなど持ちながら『はなぞの園』と書かれた門へと進んで行った。
*
「さて…帰るとするか…」
任務を終えた運転手は麗奈邸へと戻ろうと車を発進させようとしたが、隣りに停車している黒いスポーツカーに目を奪われた。
スポーツカーマニアである運転手はスポーツカーをまじまじと眺める。
『三〇の新しいスカイ〇インかー
かっこいいなぁ〜』
運転手は気が付かなかった。
運転席に落ちている黒い羽根を。