動くエサと動かないエサ、捕食者がどちらを先に選ぶかは、明白だった。
「グフ・・・・」
男の前でGAは薄紫色の涎をたらしている。
それを尻目に、龍一は這う。逃げることしか頭に無かった。
「ふうっ・・・!ふうっ・・・!」
息を切らしながら、ずるずると埃まみれの体を前に進める。だんだんと痛みもひいて、体に力が戻ってきた。
龍一は踏ん張って立ち上がり、できる限りの小走りで校舎の角を曲がった。
GAは追ってこない。龍一は必死になって距離を稼いだ。
「ハァッ・・!・もう・・・大丈夫かな・・・」
龍一は足を止めずに呟いた。
(・・・死にたくない)
つい数分前まで首筋にナイフを当てていた男の結論のは、それだった。
(やっぱり死ぬのは怖い・・・死にたくない!!)
顔を涙と血でぐしゃぐしゃにしながら、龍一は立ち止まった。
先ほど曲がった角を、チラリと見てみる。
あの先ではたぶん、あの化け物が無抵抗な男を前に、『食事』をしているんだろう。
「すまない・・・さっきの人・・俺は・・・死にたくない。」
龍一は謝った。
それはつまり、「あなたを見殺しにします」と、宣言したのと同じことだった。
そして、次の一歩を踏み出そうとした―――\r
その時だった。
不意に、声が聞こえたような気がした。
「やらなきゃ誰かが困るってゆうなら、俺はやるぜ?」
「ア・・・キラ・・・?」