いつも彼女を待っているんだ
彼は新宿発の電車の席をとるために
早く来て隣の席に鞄を置いておくんだ
彼女はいつも
電車の発車する直前にくるんだ
毎日
同じ車両に乗り合わせるぼくらは
彼の彼女に対する気持ちを知っている
それはやわらかいオレンジかピンクで
幸せな気持ちと幸せにしたい気持ちであふれているんだ
今日はまだ来ていないのか
うつむいたり
新聞を読んだり
携帯をいじりながらも
皆気になっている
今日はまだ来ていないのか。
私の気付いた時には
もう電車は走りだしていた。
私にとっては
電車が走っているかどうかなんて
注して関係がなかったんだ
いつも彼女が来たらうれしそうにどかせる鞄を
今日はおいたままなんだ
他の駅からも彼女はくるのかな
『お待たせ』
と笑うのかな