武田が僕を見ている日は毎日続いた。だけども僕は由紀との毎日の楽しい時間を過ごしていることで、そんなことどうでもよかった。むしろもっと見てくれ、僕は今幸せなんだ、とも思った。
ある日僕は由紀をデートに誘った。由紀とのはじめてのデートだから映画がいいだろうと思った。
「由紀ちゃん、観たい映画があるんだ。一緒に行かない?」
「いつ?」
「そうだなぁ。今週の日曜日は?」
「うん、その日は空いてるから行こうか。」
満面の笑みで応えるその表情を見て、僕は少し時間を忘れた。
「どうしたの?」
「ううん、じゃあ行こう。」
僕らは今週の日曜日にデートをするのだ。その日までの時間が長く感じるだろう。由紀もそう感じてくれるのを願った。
由紀とのデートの日になった。新しい服を買って、今まで以上にオシャレをして家を出た。駅へ迎う途中にある武田の家を見た。武田は窓から僕を見ていなかった。
駅に着いた。僕のほうが早く着いたようだった。周りには恋人を待つ人が僕以外にたくさんいた。その空間の中に僕もいることが、少し不思議に感じた。由紀が小走りでやってきた。白のワンピースを着た可愛らしい由紀を見た僕はまた時間を忘れた