僕らのSUMMER HOLIDAY?

 2007-10-09投稿
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 今日から夏休みだ。外では蝉がミンミン、中ではクーラーがスゥーっと亮輔(りょうすけ)を誘う。
「ようし、決めた!中浜と遊ぼう!」
 亮輔の声が家中に響き渡る。グローブとボールを持って中浜の家まで走った。
「中浜ぁ〜!!」
 中浜の家の前で叫ぶ。中浜の家はこの都会では珍しいくらい古くて、インターホンがついていない。
「おっ、守田(=亮輔)。俺も今から守田の家に行こうと思ってたんだ」
 中浜がグローブを持って出て来る。
「母ちゃーん、遊びに行ってくるー!」
 中浜は奥に向かって叫ぶと行こうか、と言った。


 公園には誰もいなかった。
「誰もいない。貸し切りだ!」
 亮輔と中浜は一時間くらいキャッチボールに夢中になっていた。ふと気がつくと近くのベンチにもたれるように少年が立っていた。亮輔の視線と少年の視線がぶつかる。中浜の投げたボールがどこかへ飛んでいった。
「おい、守田……?」
 ボールは少年の足元に転がっていった。少年がボールを拾う。亮輔は少年に駆け寄っていった。
「ごめん、それ僕のなんだ。返してくれる?」
 少年は黙ってボールを差し出した。亮輔はボールを受け取りながら少年の顔を見た。思わずボールを落としてしまいそうなくらい綺麗な顔立ちをしていた。
「ねぇ、君何年生?」
「中一」
 中一ってことは同い年……
 信じられなかった。さらりとした艶やかな黒髪とは対照的に綺麗な白い肌。何もかもを見通しているような澄み切った真っ黒な眼。すらりと背の高い細身。何もかもが大人っぽい。
「何?」
 じっと見つめていたらしい。
「あ、いや……」
「あぁ〜!!思い出した!!」
 中浜がいきなり叫んだ。亮輔の耳にキンと響く。
「なんだよ、いきなり」
「こいつ、大阪から引っ越してきたやつだ。ほら、B組の」
「あ、そういえば」
 少年は前髪をかきあげ、ふっと息をついた。その仕草につい見とれてしまう。
「知っとったんか」
「あ、いや、まぁ……」
「そんな事より、大阪の少年も一緒にキャッチしようぜ」
 中浜が元気に言う。少年の眼に不思議な色が宿った。
「あほらしい」
 少年はそう吐き捨てると名前も言わず、公園を出ていった。
「なんだよ、あれ!感じ悪い」
 変わった人……
 亮輔はそう思った。妙に彼に惹かれていた。



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