DECEIT [突破] ?

etc.  2007-10-10投稿
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 車は右に左に動き回り、望は前を見つめてハンドルを素早く操る。

 「各チームに通達する!! 敵と思われる車両、二台が我々を追跡中!! プランDに変更!! 繰り返す! プランDだ!!」

 『……了解……直ちに援護を向かわせます……』

 携帯電話から聞こえてくる声は緊張しているようで、固く聞こえる。

 光が我に帰り、後ろを振り向くと二台、黒塗りのバンが物凄い速度で向かって来ているのが分かった。

 「また、あいつら!?」

 すると冷たい風が車内に流れ込んで来た。

 その冷たさは空調機の風ではない。

 ふと気がついて上を見上げると、オレンジ色の大きな雲が広がっていた。

 「ちょっ……何してんのよ!!」

 「悪いがお前さんの喚き声にいちいち答えている暇はない!!」

 車は完全にオープンカーとなっていた。

 横には後ろの車に向けてJがライフルを構えている。

 「特製12ミリ口径でもくらいやがれ!!」

 約一時間振りのJの口から漏れた言葉は、子供がシューティングゲームをしながら言いそうなフレーズ。


 ……ズダンッッ!!


 何があったのかはその時は分からなかった。

 後ろの二台の内の一台が、物凄いスリップ音をたてながら、右に回転を始めたのだ。

 車の右の前輪はすでに形を維持してはいない。

 バランスを崩した車は、一生懸命に道路に留まろうと必死だった。


 一瞬の事だった。

 横を通り過ぎた対向車である大型トラックと衝突し、ガードレールの外へと掃き出される。

 「……ざまぁみやがれ!!」

 光はまた泣き出しそうになっていた。

 『何なの…… この日本人は……』

 直ぐさま望が光の安否を伺う。

 大丈夫だと望は見たが、光は外傷は無いものの”内傷”が激しかった。

 「死んだらどうすんの!!」

 「死なない程度にやってんだよ」

 光の目の前を死が通り過ぎたが、そんな事を望は気にもしない。

 「一段落ついたな」

 望は尚も対向車線を乗り越えて行ったり来たりしならがら、安堵のため息を漏らした。

 しかし、望遠鏡を覗いているJの次の一言で皆が凍り付いた。

 「……もう一台は何処だ!?」



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