体育館のざわめきは、一層大きくなって行った。
斉藤サツキは冷汗を流しながら自己弁護をした。
『そんな、濡衣です!何で私が詐欺なんか!』
しかし―\r
『だからあ、証拠は揃ってるんだって』
梅城ケンヤは苛立たし気に髪をぽりぽりと掻いた。
『何の準備もなく私が処刑を命ずると思うのかね?しかも、君は先会長の時に同じやり方で二人を死刑にさしている―証拠も証人も証言も記録も山盛りある。全く今の今まで処罰されなかったのが不思議な位だ』
呆れ顔でそう説明しながら、梅城ケンヤはかつて一条フサエに対してそうやった様に、演壇から一冊の黒ファイルを、斉藤サツキの足元に投げ付けた。
恐る恐る拾ってそれを読んだサツキの顔面が見る見るこわばる。
最早言い逃れは出来ないだけの綿密な調査・情報収集の成果が、それにはびっしりと詰め込まれていた。
彼女の悪行について直接間接に情報提供・聴取に応じた生徒達の回答だけでも、五0人に及ぶ。
その半数近くが、日頃仲の良かった友人達だ。
その中には親友だけではない、元カレの名前まである。
つまり彼女は―\r
友達に掌を反され・裏切られ・売り飛ばされたのだ!
『ゆ、赦して下さい!この通り―反省しますから!』
完敗を悟った斉藤サツキは、黒ファイルを投げ捨てその場に膝まずき、命乞いを始めた。
『どうか御慈悲を―人権と人道に基づいた減刑をお願い致します―せめて弁護士を呼ばせて下さい!』
膝まずきながら両手を合わせて哀願する彼女に梅城ケンヤは正直吐気を感じた。
―制度を悪用して今まで散々無実の生徒を死なせて来たくせに。
都合が悪くなると今度はその制度の保護を求めるのかよ―\r
全く、どこまで腐ってるんだ―\r
当然、彼女の涙に負けて、笑顔で赦すような梅城ケンヤではなかった。
『君に陥れられて殺された同級生達も、恐らくそう助命をこいながら容赦なく処刑されただろうよ』
梅城ケンヤは悪魔的な笑みを浮かべた。
『だが、そこまで謝るのなら考えてやっても良いが?じゃあ私ではなく生徒全体に聞いてみようか?』
ケンヤが頷いて合図すると、赤木風紀委員長が再び声を張り上げた。
『生徒有権者諸君!斉藤サツキは助命に価するか否か、その処遇や如何に!?』