3年前。春が来た。初めて君に電話が繋がった。でも出てきたのは君ではなく、君のお母さんだった。その人は彼女が入院していると言う。僕は病院を聞き、何も考えずに走りだした。
病室のベッドの上に君はいた。少し驚いていたようだけど、笑顔で言う。
「久し…ぶ…り…だね…」
以前のままの透き通った声だった。でも囁く程度の音量。そう。彼女の喉には肉腫ができていたのだ。
それからは毎日のように病院に行った。彼女の病気は悪化していき、手術を勧められるようになった。手術をしなければ先は長くない。すればもっと長生きできる。ただし声は出なくなると。彼女は悩んでいた。僕は何も言えなかった。
ついに彼女は手術を決め、手術は無事に成功した。
彼女の声は出なくなった。