「竜二は…竜二はどこ?」
あーずは震えが止まらない。
「そんなこと…」
千春まで気弱な声になってる。自分が誘ったから、責任感があるのかもしれない。
「墜ちたんだ」
え?と、あーずが振り向く。
「墜ちたんだよ、穴の中に。そして穴は…」
静かに、ドクタが続ける。
「広がる」
ドクタが言うが早いか、黒い穴はじわじわと広がり始めた。
「…入ろう」
言ったのはぽっつりだった。
「竜二が…あいつがどうなっているかはわかんねぇけど、とりあえず、入ろう!」
強気な言葉だった。
「…分かった。このままじゃ、気まずいもん。入ろ!」
千春が足を入れた。穴はどんどん広がっている。
「さ、みんなも」
千春の言葉にみんなズズ…と穴に入る。
「…ドクタ」
私は一番訊きたかったことを、訊くことにした。
「なんで、この穴について、詳しいの?」
ドクタが微笑んだ。
その微笑みを最後に見て。
私は穴にのみこまれた―。
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「ん…」
気がつくと、私は穴の中にいた。周りは黒一色。どういう向きとか、全然分からない。
ただ、凄い速さで落ちているのは分かった。ジェットコースターが下に急降下するときみたいな、変な感じがしたから。
「千春ぅ」
情けない声がでた。
「その声は…亜実!」
暗闇から千春の声がした。
「よかったぁ…あーずとぽっつりは分かってたから」
「お、おい。ドクタは?まさか、置いてきたんじゃないだろぅな!」
ぽっつりが訊く。
「ドクタぁぁ!」
あーずが叫んだ。
「…はぁい」
3秒後ぐらいに、ドクタの声がした。
「よかった。全員いる」
千春が安堵のため息をもらす。
「そういえば、いい案を思いついたの!みんな、携帯はある?」
言われたので、全員携帯を取り出す。
世の中には"小学生が携帯を持っているとカッコいい"とか思ってるヤツらがいる。けど、携帯電話というのはカッコいいから持っているのでは無く、実用的だから持っているだけ。少なくとも、私の場合は…。
っと、話がそれた。
で、千春の"いい案"とは何だろ?
「いーい?携帯で竜二に連絡するの!そしたら居場所とかも分かるじゃない!」
名案!かと思ったら。
「だめだ」
ただ一人、ドクタが反論した。