次の日――。
「なぁ、中浜、行こうよ」
「俺やだよ。なんかムカつくし、ヤな奴だったし。なんでわざわざ探しに行くんだよ」
「いいじゃん。中浜も暇だろ?それに昨日のままじゃ、なんか学校で顔合わせずらいよ」
「あいつの顔見なきゃいいじゃん?」
「そんなこと言わずに……」
ここは中浜の家。亮輔はあの少年が気になるから、中浜に探してみようと持ち掛けたのだ。
「あ゙ぁ〜、アチい。家帰ってゲームしようぜ……」
渋々ついて来た中浜がグダグダ言う。
「それじゃあ、今までの時間が無駄になっちゃうじゃないか」
「だいたい何の為にこんなこと……」
「……!」
先の方で角を曲がるあの少年が見えた。亮輔の足が地面を蹴る。走る。
「え?待って、守田……」
後ろで中浜の声がする。仕方がない。中浜には後で追い付いてもらおう。今がチャンスなのだ。逃す訳にはいかない。
「ちょっ、ちょっと……!」
必死で少年の肩を掴む。なんでこんなに必死なんだろうという考えが、頭にちらっと浮かんだ。
「あんたは昨日の……」
「昨日は何でか知らないけど、怒らしてごめん。僕達、悪気はなかったんだ」
「あぁ、ええよ。俺も急にキレてもうて……悪かったな」
後ろからハァ、ハァという声が近づいてきた。
「中浜、お前息切れすぎ(笑)」
「お前勝手に仲直りしやがってずるいぞ。おい、少年。俺もなんかお前の気に障る事言ったかもしれない。ごめんよ」
「あぁ、もうええねん」
「じゃ、仲直りの印に名前教えて。僕は守田亮輔」
「俺は中浜純一」
「俺は…暁恭(あかつききょう)」
横にいた中浜の口があんぐりと開いた。
「え…うそ、まさか……顔が似てるなとは思ってたけど……」
「え?何?」
「あの高校野球で有名な暁檀(だん)の弟……?」
「そや……」
暁が唇を噛み締めた。中浜がはっとして頭を下げた。
「ごめん。だからキャッチ拒んだんだ……」
「え、何なの?」
高校野球をあまり知らない亮輔が言った。中浜が暁の方をちらっと見た。
「俺の兄貴は甲子園で有名な打者やったんや。俺が言うのもなんやけどな、最強スラッガーって言われる程すごかった。それが去年の夏……」
暁は自ら話し始めた。