龍と狼2

武藤 岳  2007-10-11投稿
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反省と言われても、何をどう反省するのか、意味も手段も理解できない彼に与えられた法の裁きは『特等少年院』への送致だった。



一.

1998年8月


茹だるような暑さを吹き飛ばすかのような、突然のスコールが通り過ぎた後の閑静な住宅街の一画に、白いセダンが止まった。

暑苦しい紺のスーツを着た中年の男性と、見るからに涼しげな白いポロシャツとアイボリーのチノパン姿の青年が車から降り立った。

スポーツ刈りのような短髪と優しい風貌がミスマッチだったが、その冷めた目は、いつぞやの惨劇の主役だった頃と大差はなかった。

『守山』と書かれた表札の家に二人が入ると、六十過ぎの初老の男性が玄関に立っていた。

「お待ちしていました。保護観察官の守山です。」

初老の男性が話すと、スーツ姿の中年男性が、少し間を置いてから切り出した。
「弁護士の中原と申します。お会いして、いきなりで申し訳ないのですが、彼の保護観察処分について、重要なお話があります。」

守山が怪訝な表情を浮かべた時、青年の口元が微かに緩んだ。



応接間に、守山と向き合って、二人が並んで座っていた。

守山の表情は硬く、苦渋の形相だった。

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