夜空の高い遠い位置に「それ」は輝いていた。
いくつかの星達をしたがえ微かに雲をまとい。
正確に言えば「それ」も照らされてるにすぎないが‥
月に目がいった瞬間、音楽が聞こえて来た。
『なに?どこから?』
私はカーステレオのボリュームを下げた。そしてもう一度、月を確認した。
オーケストラと言うよりは四重弦楽奏のような、聞いたことのないメロディだった。
病院からの電話で祖母の危篤を知らされ、向かう途中だった。
『お迎えの葬送曲いわく送迎曲?』
三日前、祖母は倒れ回復はないと言われ、目覚めのない眠りにつこうとしていた。
両親に代わり私を育て上げてくれた祖母は裕に90を越えていた。
不思議と安らいだ温かく清々しい、まるで幼い頃祖母に抱きしめてもらってた時の様な優しさに包まれてながら月を見上げていた。
『さよならなんだね』
声に出して私は言った。
音楽を感じたせいだろいか、淋しさはあったが悲しみは薄らいでいた。
病室では、遅いメトロノームのように、祖母の体に繋がっている医療機は旅立ちがもうすぐである事を告げていた。
そしてその時‥
『ありがとう‥またね』
私はそう言えた。あの音楽のおかげで。