報道でも、ひっきりなしに言っていた。
『この少年は至って普通の真面目な少年でした。』
(真面目な人間、みんな真面目なんだよ。
今でも君は真面目な人のはずなんだよ。
違うんだよ。人を殺した罪を償うと言う事と真面目はイコールじゃないんだよ。)
心の呟きがシグナルとなって、守山の六感に響いた。
しかし、青年が守山の瞳をじっと優しく見つめた瞬間、守山は静かに頷いてしまった。
(ダメだっ!)
シグナルは大きくなっていたが、彼の優しさと、罪を犯した人間には到底思えない、澄んだ瞳には勝てなかった。
二人が去った後、守山は妻に静かに言った。
「彼が万が一、もし、同じ罪を繰り返してしまったら、私は彼と心中してでも本当の償いをさせる。
そうならないように祈っていてくれ。」
妻は“まさか”と言った軽い素振りで相手にしなかったが、守山は嫌な胸騒ぎを抑える事ができなかった。
そして、ワイドショーの格好の餌食となりながらも、青年を載せた飛行機がアメリカに向けて飛び立っていった。
二.
2008年10月
戦後から一貫して政権与党の座に君臨し続けた自由労働党が、最大野党の民自党に与党の座を奪われて以来、