2年前。春が来た。君はすっかり元気になった。
手術後は君も落ち込んでいたけれど、声は出なくても君は君だ、生きていることに意味がある、と彼女を励まし、自分にも言い聞かせた。
彼女は天使の声と言っても過言ではないくらいの美声と引き替えに命を手に入れたのだ。もう彼女が苦労する事はこの先死ぬまでないと思っていた。
しかし…
彼女の病気は再発した。また入院生活の始まり。あの声は何の為の犠牲だったんだ?納得できない。彼女ばかりが苦しむのは一緒にいて泣きたいほど辛かった。
そして1年前。
朝日が眩しい春の日のことだった。
君はいなくなった。
最後の言葉は
勿論なかった。