プルルルル…
その場ですぐにかけ直せなかったから、放課後になってからかけた。
「もしもし!?」
―ただ今、電話に出る事が出来ません。発信音の後に…
アナウンスが流れて電源ボタンを押す。
(…出ない。完璧、すれ違いだ…)
肩を落とすと窓の外に目をやる。
(やっぱ先、帰ったのかな…?)
外は薄暗くて雨が降り始めていた。
強く降らないうちに帰ろうと教室を後にしたら、靴箱の前で知っている顔に出くわした。
「何やってんの?そこ私の靴箱」
私の靴箱を背もたれにして鞄はまるで枕代わり。
「おまえ待ってた」
ゆっくり退きながら答える松本。
あんな事があった後だからまともに目合わせらんないじゃん!
「何?」
わざとぶっきらぼうに問い掛ける私。
「帰ろうぜ!」
そう言いながら松本が手を差し伸べて来た。
「あ、アンタ何考えてんの〜!?」
その手を軽く払って
「彼氏がいる相手にそんな事する?フツー!だいたいあの時だって…あっ…」
思い出して恥ずかしくなった私は途中で言葉を失った。
「けど今は一緒じゃねーじゃんかよ。一緒だったら、おれだって諦めて帰ってたって」
松本が不貞腐れながら言った。