ヤス#168
「おう!久しぶりにサトリとも会いたい。連れていってくれるか」
「勿論です。母さんにも会って欲しい人がいるんだ」
「泰子さん…でしょう?」
「知っていたの?」
「弘子さん…女将さんから聞きました。あなたのもう一人のお母様ね」
「うん…」
「いよいよ…だな。ヤス殿」
ドアをノックするものがいる。
「おう!入れ」
「失礼します…」
静かにドアが開いた。入って来たのは次郎。次郎はヤスの顔を見ると腰を屈め、そして、膝をついた。
「ヤス様…お久しぶりでございます」
「次郎さん!」
「はい。次郎です… この命、どうにでもお使い下さい」
「次郎さん…」
「ヤス殿…純子の事だが…」
「はい」
「ただものではないと思ったからこそ、嫁にしたんだがな…ヤス殿の母様だったとはな…因果だな。誉に思うぞ…純子…ヤス殿を頼むぞ」
「…はい…あなた…」
親分の瞳には涙が滲んでいた。その訳は知る由がない。