龍と狼8

武藤 岳  2007-10-13投稿
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馬鹿正直な自分にいつも呆れてしまう。
祖母の言葉を常に聞いて生きてきた。
『日本人殺害専門スナイパー』
子供の頃から本気でなるつもりでいた。
軍に入隊する時も、徴兵ではなく志願して入隊した。

海兵隊に入隊したのも全ての理由はその為だった。
ただ、事情が少し変わった時があった。

イラクに派遣された時、初めて憎悪の連鎖が生み出す殺戮の恐怖を目の当たりにした。

テロを心から憎んだ。
憎しみは憎しみを呼び起こす事を実感した。
自分が人生の目的にしてきた事は間違いだったのか?

しかし、最近の日本の態度が緩んだ気持ちを引き戻すきっかけになった。

棟方・・・
この男は危険な人物だ。

殺し甲斐もあるし、祖国にとって除外する必要が最も高い人間だ。
今日殺した人間など、クライアントの要望がなければ、標的にはしない。



エレベーターが上がって来て、扉が開いた時、男の表情は冷静な顔つきに戻っていた。

ビルを出た時には、交差点の辺りはたくさんの人だかりができ、警察車輌と救急車のサイレンが、けたたましく鳴り響いて異様な空間になっていた。
男はその光景を見る事もなく、しばらく歩いてから、オープンカフェの店に入った。



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