航宙遊牧民族が人類に先駆けて始めた事は、他にも色々あった。
超高速宇宙船に武装を積んで、宇宙時代初の恒星間機動部隊を作ったのも彼等だし、軍事目的の情報システムを応用して、軍艦を改装した中継船を使った通信・情報システムを民間に解放し、この分野での太陽系連邦独占体制を打ち砕いたのも彼等であった。
更に、その強大な軍事力・情報力を背景に、主要航路を押さえ、通行税を徴収し、やがてこれは航路保険の制度にまで進化した。
情報通信・航路保険料は莫大な収益を彼等にもたらした。
銀河元号四00年時点で、人類宇宙の総人口は推定五六0億人・内、太陽系連邦市民が五一三億人と、相変わらず多数を占めていたが、特筆すべきは全諸国GDP合計額の六九%にまで彼等のシェアが下がったのに対して、航宙遊牧民族群は全て併せても僅か三億八000万人しかいない筈なのに、経済規模では一六%と、早くも太陽系連邦に次ぐ力を有し始めた事実だった。
しかも、航宙遊牧民族は人口比率で百倍以上の超大国の四分一近くの富を蓄えていると言う、信じれない《経済成長》を果たしていたのだ。
これは、一人当たり所得に換算すると、太陽系連邦市民1:航宙遊牧民31と言う大変な差になっていると言う事だった。
航宙遊牧民は、宇宙唯一の超大国市民よりも三0倍以上も豊かなのだ。
銀河元号四一五年・彼等は政治的にも力を得ようと、ボイオティア星系にて大会盟を催し、全遊牧民族を大きく四つの共祖集団に再編成した。
それぞれスキュタイ,フンヌ,テュルクメン,ヌミディアである。
全ての名称は地球時代の遊牧民族から採られ、彼等はその子孫であると主張し、これが民族的アイデンティティーの役目を果たす事となった。