那賀間 葵(ナカマアオイ)、15歳。高校一年生。成績校内トップ。容姿端麗。彼氏無し。
「…はぁ」
私の友―若林 美帆(ワカバヤシミホ)に、「私ってどんなイメージ?」と訊いた。その答えが上のとおり。
「あんたさぁ、一生彼氏無しで過ごすん?なんもせんでも男がよってくるんよ?チャンスはこれもんやわ」
美帆がそういって大きくカーブを描く。
「そんな言われても…いい男がおらんから…少なくともこのクラスはなぁ…」
「理想、高すぎ!欲張ると、一生独身や」
「そういう美帆こそ彼氏おらんくせに」
美帆はうっと詰まった。
「美帆も可愛いやん。男は大人な女より、子供っぽいほうが好きやからなぁ」
「恋愛経験ないくせに、なんでそんなことがわかるん?」
私はおでこを指差して、
「女のカン!」
と叫んだ。
きーんこーん
チャイムが鳴る。私と美帆の恋愛論争はおしまい。
「恋愛相談ならあたしやから!葵よりは恋愛経験上やもん!」
美帆が最後に一言。
全く、酷い言われ様。
‥‥‥‥‥‥‥‥
恋、ねぇ…。
私は頬杖をついて考える。
確かに私は見た目は大阪人には見えない。
けど、生まれも育ちも、私は全部大阪。美帆も大阪人。
私は世間で言う、美女。美帆の言うとおり、「なんもせんでも男がよってくる」ような女。
でも、私の理想は高い。なにより、「私より身長が高い」なんて人は、同い年ではあまりいない。なんてったって、私の身長は168cm!年上は大嫌い。年下は論外。同い年で、私より身長が高くて、運動神経抜群な人が理想。
んな人いないわな。
私はシャープペンを指でクルクル回しながら、先生が来るのを待った。
かっこいい転校生でも来ないかな。まぁ、そんな望み、叶うわけないけど。
ガラッ。
先生が来た。
私の担任教師は、天草 美紀先生。優しくて、可愛くて、背の低い女の先生。私はこの先生が、大好き。
「おはよう。今日は、転校生が二人もいますよ」
いつもと同じ、はんなりした京都弁でしゃべる先生。一瞬、先生の言葉が理解不能だった。
ててて……転校生!?
私は頭をコツンと叩いた。まだ男の子って決まったわけじゃないのに、なに慌ててんねん、私………。
「私が恋するなんて、ありえへんもんな」
小さな呟きが出た。
でも
私は
まだ気付いていなかった。
これから始まる
激しい
恋の戦いと
自分の運命に―。
なんで、あの時、
気付かなかったんやろ…。
鈍感すぎや、私。