デリート 1・殺戮の女王

朝倉令  2006-03-19投稿
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 case‐冴子

ニューヨーク・サウスブロンクスの一角

「俺がカルロスだ」


武装集団の奥からスペイン訛りのきつい米語が響いてきた。
 あまたの銃口が、自らに向けられている事を意に介さぬ様子で立っているのは、東洋人の女である。

 癖のある黒髪を無造作に束ね、SWATスーツを着用していたが、身に寸鉄も帯びていない。


「ニューヨーク土産にあんたの首、貰うわよ」

 低めの、幾分ハスキーな声で女・木島冴子は宣言すると、シューティンググラスをむしり取った。

 現れた瞳が、琥珀色に妖しく光っている。


「キメラだ……」


武装した男達の間に、低いどよめきが広がっていくさまが見て取れた。


「何? 女、名は?」


「ワイルドキャット(山猫)」


カルロスの背を、一瞬、戦慄が走り抜ける。


  ファクトリーの残党……


「伝説のモンスターがお目見えとは、光栄だ。
 では、お手並み拝見といくか」


カルロスが男達に、一斉射撃の合図を送る。

にわかにグォオオッと野獣の叫びが地を震わせ、殺戮の序曲の幕開けとなった。





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