私は元々強気な性格なのもあって、私は強いから平気だと口走っていた。
でもその人は、泣きたい時には泣いてもいいんだよ、と言って抱きしめた。
優しくされて思わずさらに泣いてしまった。
会社の近くでのそんなやり取りに気付いて、王子様が駆けつけた。
私は無意識に、抱きしめられてた人から離れ、王子様に抱きついた。
私が落ち着いてから、二人に送られ、三人で家迄歩いて帰った。
この一連のやり取りを会社の人に見られていた事を後から聞いて恥ずかしくなった。
帰る途中、三人で歩くなんてなんか異様な感じがした。
王子様が両手に花だね、と言ったので
二人とも既婚者だけどね、と皮肉った。
マンションの下迄送ってもらってから、鍵を会社に忘れた事に気が付いた。
会社の鍵も一緒のキーケースに付けてあるから入れないし、時間も遅いから会社に誰もいないし、と困った。
どうしようかと三人でしばらく考えた。
まだお酒が残っていたのもあって、王子様は私とホテルに泊まると言っていた。そういうわけにもいかないと思い、営業マンに電話をしてみた。
営業所の鍵は一人一つ持っていたから、借りようと思って。
頼みやすい人から電話したけど繋がらなくて、年配の営業マンにやっと繋がって鍵を借りる事になった。
時間も遅く、ほんとに申し訳ない気持ちで一杯だった。
三人でタクシーで会社まで戻り、キーケースを手にしてホッとした。
王子様は会社に停めてある自転車で帰ると言い、もう一人の人は車で帰るから私も送って行くと言って駐車場へ向かった。
私は気持ちが高まっていて、王子様と二人きりになったので自分からキスをした。
驚いていたようだったけれど、今度は向こうからキスしてきた。
車を用意してる人にバレると思い、何もなかったかのように自転車で帰る姿を見送った。
私も送ってもらって帰った。
それからも王子様を落とそうと、クッキーを焼いてプレゼントしたり頑張った。
また会社の飲み会があった時には、今度デートしようと言われて喜んでいた。
でも、王子様は海外出張が多くなり、会社で会う機会が少なくなり、結局デートは出来なかった。
忙しかったのもあるけど、やはり妻子ある人だから私の相手をするのを止めたのだと思う。
それから会社の新入社内歓迎会の時期になった。