「魔女討伐依頼ですか…?」
「まぁ、そうなるね。魔術士の仕事の八割は魔女討伐だから、仕方ないがね。他事務所の魔術士との対立よりかは、幾分マシだよ。」
「そんな事もあるんですか?」
レイナードの意外な一言にキッドは驚きを隠せない…
「どんなに体よく言い繕おうが、魔術士にとって依頼は絶対だからね…時に犯罪でも依頼であれば、遂行するのが魔術士だよ。つまりは依頼人次第って事さ。因果な商売さ…」
「魔術士は困っている人達を救うのが仕事じゃないんですか?」
キッドの質問にレイナードは表情を曇らせる…
「困っているのは、何も善人だけじゃあないってことだよ。悪人だって困ることはあるさ。違うかね?」
ズシンとのしかかる一言…確かにきれいごとばかりを言っていられる仕事ではないと思っていた…
時には犯罪まがいのことをしてでも、解決しなければならない事件もある、と覚悟もしていた…
それでも人を救う為には仕方のないことだと。
しかし、救う対象が犯罪者であるかもしれないなんて、考えもしなかった。
「ま、この話は置いておいて…本題に戻ろう。爆破系の魔術は広範囲に被害を及ぼす。ましてや、魔女討伐となると戦闘は免れない…被害を最小限に抑えるためには、アルベルトの魔術では難しいんだ…彼のは、被害を拡大させ兼ねないからね。」
「アルベルトさんも広範囲に影響する魔術を使われるんですか?」
「うー…ん…、アルベルトの場合は使い方の問題何だろうがね…」
レイナードは小声で、キッドに耳打ちする。
「!そんな事出来るんですか?…見た目に寄らないものですね…それだったら僕のなんて、何の助けにもならないですよ?」
「それは、分からんよ?魔術は使い方次第で、無限の戦略を作る事が出来る…認定試験の第一問目、覚えているかな?」
「…魔術とは、想像を具現化すること…」
「その通りだ。始めから出来ないと思っていたら、何も出来るわけがない…と思うがね?」
レイナードの言葉は、不思議とキッドの心に響き、染み渡る…
この話術がこの人の魔術…なんだろうか、
「僕の魔術は…そうですね、魔術を斬るんですよ!」
キッドが奥の部屋に入って、3時間はたっただろうか…
いい加減しびれを切らして、奥の部屋へアルベルトは向かう。
と、同時に二人が部屋から飛び出して来た。