アパートの小山内の部屋をノックした。
「小山内さん?いるんだろ?いるんだろ!」
ガチャガチャ…
鍵がかかって開かない…
ベランダから回れるはずだ。
ベランダから少し中が見えた。
見たくもない光景だった…。
小山内が天井からぶら下がっていた。
ガラスを割り、部屋へ飛び込んだ。
まだ息がある。
「小山内さん。小山内さん!」
ふと頭の中をよぎった、「助ける勇気。死なせてあげる優しさ。」
僕は迷わなかった。彼女が苦しんでも…僕が支えればいいんだ…
無我夢中で彼女を縛るロープをあのナイフで切った。
うつむいた彼女は「死なせて…お願い……。」
「バカやろー!俺は死なせない!認めないからな!病気から逃げる小山内さんを俺は許さない。何度死のうと考えても俺が何回でも止めてやる!」
彼女の目には大きな涙が溢れていた。
気がつくと、僕まで涙を浮かべていた…
何日か前までの自分では考えられない…
あの鍵が…
全て変えたんだ…
彼女を病院へ運び、バカな考えを起こさせないために、ぼくは小山内のそばにいることにした。