旅立ちは闇夜を駆ける炎によって

メタトロン  2007-10-15投稿
閲覧数[156] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「つまんねぇ・・・」
一日の仕事を終え海に沈もうとしている夕日に照らされ、俺は眼の前にいる連中に吐き捨てた
いや、正確には『いた連中に』だ
今、俺の前には身体のアチコチを押さえながら呻いてる奴らが八人程転がっているだけだ。

「お前らさぁ、俺に喧嘩売るならもうちょっと楽しませろよ?」
「うぅぅ、『黄昏の破戒魔』がぁ・・・」
そう絞り出した足元の一人の腹に軽く蹴りを入れる
黄昏の破戒魔・・・私立湘雲高校に入学三日目、絡んで来た上級生連中をボコした結果、俺『佐藤 青也』に与えられた二つ名だ。制服の白ランが夕闇にマッチしたらしく『黄昏』だそうだ。
つまり、灰色の高校生活の片道切符て訳だ。
その切符を片手に二年、寄ってくるのは功名心溢れる恐面ばかり、女子は声をかけても逃げ出される始末。

「何が『破戒魔がぁ〜』だよ!街中で堂々と浜辺への呼出し、木刀や金属バットまで用意してこの程度?ざけんなよ!」
もう少しで女の子仲良くなれたのに・・・

俺は波打ち際に突き立つ木刀を掴む。土産物みたいな安い作りじゃない、樫の木を削った年代物だ
「いい木刀だな。これは手間賃がわりに貰うぜ?これに懲りたら二度と喧嘩なんか売ってくんじゃねぇぞ!」
あ、気絶してるや
「しゃ〜ねぇ〜なぁ〜・・・って、ウワァ!」
木刀を引き抜こうとしたとき、足がもつれ頭から倒れちまった。

?おかしい。手がつかない?足も?土はみえてるのに・・・
違う!身体が沈んでいく!?砂じゃない何かに!

身体を起こそうとするが何かに引っ張られて起き上がれない!
引き・・・込ま・・れ・・・


遠くで
遠くで声が聞こえる
「ね・・ま!村に・・・・そんち・・・・呼ん・・・!」

月明かりしかない薄暗い浜辺を誰かが駆け寄ってくる
再び闇に沈みそうになる意識の中、炎を纏った少年が走ってくるのが見えた気がした。


これが俺の旅の始まり。
今までの常識が全く通じない。不思議な旅の始まり。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 メタトロン 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ