ヤス#170
玄関の開く音がした。
「お…早速、来たようじゃな」
「誰か来たのか?」
「泰子殿じゃよ。それにご子息の泰治じゃ」
「二人に会ったのか?」
「当たり前じゃ。お前がツブテを授けたおなごじゃ。会わずにおれようか。それに泰治には剣を授けた。両刃の剣じゃ。善と悪を見分ける。もう、ヤスの知っている泰治ではないぞ。立派になりおったわ。ふぉっ、ふぉっ」
「ごめんください!」
「おう!入るがよいぞ」
泰治に続いて泰子が入って来た。泰治は背中に太刀を背負っている。一見、昔の泰治だが、目が違っていた。鋭い眼をしている。
泰治は片膝を床につくとサトリに挨拶をした。そして、ヤスに向かって口を開いた。
「ヤス…久しぶりだ」
「おう!元気だったか」「この通りだ。ヤス…俺は昔の俺ではない。このサトリ様から戦士の命を受けた。この命、捧げるぞ」
「泰治…」
「…と、まあ、挨拶はこんなところだ。いやぁ!久しぶりだなぁ!会いたかったぞ!」
泰治は顔を崩した。昔の泰治だった。
「やっちゃん、久しぶりね…向こうは大変だったようね…それにしても…純子さん、純子さんだわ…」