?失くしたもの -ナクシタモノ-

壱河 ゆりゑ  2007-10-16投稿
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どこを探しても見つからない。
一体どこにあるのだろう。
しまってある場所はわかっているのだけれど、カギが見つからない。
大事に、大事にしていたから逆に見つからなくなってしまったようだ。
えっと私が探しているものは………。
何だったっけ?
あれっ?
どうして探し始めたんだっけ。
えっと、それは。
え〜と………。

あの日、電話がかかって来た。
雨の降る日で気分は良くなかった。
相手は暫く会っていなかった彼。
会ってくれなかった理由は聞けずじまい。
聞く度胸がなかった。
話しの内容はシンプル。
「まだ俺のことが好きなら…もう一度俺と会ってくれ。明日の午後五時に公園で待ってる。」
それだけ。
自分の言いたいことを言っただけ。

でも私どうして探し始めたの。
何を?
『探しているのは。彼との想い出。心の傷が想い出の引き出しを開けるカギ。』

私は別れたくなかった。
好きだった。
もう一度会いたい。
どうして好きになったの。
どうして会いたいの。
どうしてあの時………。
もういい考えるだけ無駄。
早く彼来ないかな。
………。
あっ来た!
「なぁ。聞いてくれ。俺からフラれたみたいに思ってるようだけど。俺達はまだ、別れてない 。もう一度付き合ってくれ!」
って言ってくれると思った。
言ってくれたらいいのにって思ってた。
だけど、そこに、彼はもういない。
私が見つけたその時に彼は消えた。
正しくは、彼の命のともしびが。
信号待ちしていた彼に。
手に小さな箱を抱えた彼に。
トラックが飛び込んだ。
それは一瞬のこと。
それは一瞬。
一瞬。
彼に駆け寄る私。
「これ……買うために会わずに働いたのに………。別れて時間作ったのに………。」
手には小さな箱。
「開けて、俺に見せてくれ。」
箱の中には 小さなリング。
小さな石の付いた可愛いリング。
大きな心のこもったおくりもの。
指にはめ、彼に見せる。
左手の薬指。
ニッコリと笑う彼。
涙が止まらない私。
彼はついに眠りについた。

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