着替を終え、さっぱりしたところで彼女は空腹を覚えた。
そういえば昨夜からなにも食べていない事を思い出した。
冷蔵庫を開けてみるが、昨日ここまでの道中に買ったミネラルウォーターしか入っていなかった。
買い出しもしていないのだから当然だろう。
「途中でなにか買うか…。」
とりあえずミネラルウォーターを取り出して飲みながら、山積みの段ボールの中から制服を引っ張りだす。残念ながら新しい学校の制服は間に合わなかったため、前の学校の制服だ。
濃紺の地味なブレザーを身に付け、時計に目をやる。
まだ6時を少し過ぎたところ。
約束は8時30分なのでかなり早い。
しかし出かける事にした。
辺りを散策し、朝食を買って食べて、もし早く着けば新しい学校の中を見学してもいい。
一応地図は貰ったが、迷う可能性もないとはいえない。
余裕を持って出てもいいだろうと思ったのだ。
必要な書類や道具を鞄に入れ、戸締まりと火の元を確認してから玄関を出た。
鍵を閉め、改めて扉をみる。
(ここが新しい私の家…きっとこれから何年も住む事になる…私の唯一の“帰れる場所”…。)