携帯白書 (2)

リッキー  2006-03-19投稿
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「携帯の中って・・・」

夏菜は右手に握られていた携帯電話の在を確かめた。
そして、目の前に居る少年に目を向け直した。

「携帯電話の中の世界。お前住みたいんだろ?
 だから今ココにいるんじゃねぇか。」

「・・・へ〜。」

「お前変わってるな。」

「何が。」

「初めてココに来た奴らはそんな風じゃなかった。」

「・・・何が言いたいの。」

「お前が変わってるという事だ。」

「あっ、そ。」

少年の偉そうな態度に無駄な感情を抱く事も無く、
夏菜は自分でも信じられないほど落ち着いていた。
辺りには、まるで人々が想像しているあの世のような花畑が広がっていた。
けれど、地についている左手に、草の感触は無い。

「ここはバーチャルの世界なんだよ。本当はなぁんもねぇの。」

少年が夏菜の考えを悟ったかのように言った。

「色々訊きたいことがあるんだけど。」

「どーぞ。オレに答えられる範囲でな。」

「アンタの名前は?」

「春永 コスモ」

「日本人?」

「父親は な。訊きたい事はそれだけか?」

「急いでんの?」

「いや、訊きたい事がある。」

「んじゃあどーぞ。私の答えられる範囲で。」

コスモが発する質問は、真剣な物ばかりだった。
両親はこの事を知っているか、元の世界に戻りたいと思っているか、
実はこの世界の事を知っていたか。などなどだ。
これ等の質問の答えは全てNOだった。コスモは尋ねた。

「なぜ、元の世界に戻りたくないんだ?」

夏菜は決心したかのように、自分の「今」をコスモに伝え始めた。

〜続〜

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