ふと脇に目をやると、真新しい表札のカード。
管理人が書いて入れてくれたのか「風見」の文字。
それだけでここが自分の家であるという実感がでてきた。
「よしっ!行こう!」
自分に気合いを入れると彼女は歩きだした。
こうして、
「ハリケーン・プリンセス(嵐の戦姫)」、
風見 鳥花(かざみ とりか)は、
新たな出会いの待つ、
新しい“世界”へと、
旅立った。
「今なん分!?」
後ろの水葉に聞く。
「えと、25分!」
「くっ!ギリかな!?」
家を飛び出し、真紅は全力で自転車を漕いでいた。
前を行く軽自動車を追い抜く。
かなりのスピードだ。
しかもここは登り坂だったりする。
しかしそんなこと関係ないかのように真紅はさらにスピードを上げた。
普通の人間にできる事ではない。
だが、“能力”を一部解放した真紅には、なんでもないことだ。
さらにこぎ続ける。
スカートが翻るが、後ろに座った水葉が抑えてくれているので問題ない。
続けて2台のトラックを追い越したところでようやく下りに入った。
足を止め、少しあがった息を整える。
そこでやっと、周囲の“異常な日常”が目に入ってきた。