しばらくすると林檎は泣きやんだ。
林檎は急に見ず知らずの男の前で泣いたことに恥ずかしくなって、真っ赤な顔になった。
男はフッと笑って「リンゴみたいに真っ赤だな」と言った。
林檎はビックリした。「私の名前…林檎。」
「そうなんだ。本物のリンゴみたいに真っ赤で可愛いな。」
男は照れながら笑い、人差し指で眼鏡をなおした。
林檎はその男の笑顔にドキドキした。
「貴方の名前は?」
胸の高鳴りを押さえながら、男の眼鏡の奥の瞳を見つめた。
「俺は 犀駕 太陽 〔さいが たいよう〕」
太陽は眼を逸らさずに言った。
この真っ暗な夜。いつもなら1人で、ただ…寂しくて苦しんでいた。
だけど今日は違う。
『少しずつ、ほんのりと優しく私を照らしてくれる。それは太陽のように…。』
男の名を聞いた瞬間、林檎は心の中でそう思った。
けれどそう思った瞬間、恥ずかしくてそれは言えず。
「太陽…君。優しい名前だね。」
林檎は笑ってそう言った。
その笑顔に太陽は照れて頭をかいた。