リフレイン

李寧  2006-03-19投稿
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この桜の大木の下で僕は彼女に出会った。彼女と過ごせた時間は、人生の中のほんの一握りの時間だったが、僕には忘れられない大切な思い出になっている。


僕は大学を出てから上京し、念願だった商社に勤務することができた。高校の時から付き合っていた麻美との関係は順調で、結婚目前の同棲生活。何不自由ない生活に多少の飽きを感じていた事は確かだが、それは幸せな事だと思っていた。


いつものように7時半に家を出て電車に乗り込み、2駅で降りる。駅から会社まではそう遠くない。だいたい毎日休憩含めて11時間勤務。パソコンとのにらめっこがほとんどだ。


僕の望んでいた人生を着実に歩んでいるはずなのに、日を追うごとにストレスと物足りなさが募り、僕は人との関わりを面倒臭がるようになっていった。麻美との関係自体が苦になり始めるようになってからは、軽い鬱状態に入っていた。


毎日必ずやってくる朝が辛くて仕方がない。麻美に見送られて家を出て、いつものように満員電車に乗り込んだ。定期を見てうなだれる。

………。


もうダメだ。


僕はいつも降りるはずの駅で降りなかった。ドアが閉まる。もうその時の僕に戸惑いはなかった。



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