「え…」
突然の美少女出現に、みんなビックリ。
しかも舞い降りてきたから、なおさら。
「おい、お前たち!あそこの陰に避難しろ!」
"美少女"が、ベンチを指差して言った。
千春が「避難」という言葉にピクッと反応して、
「なんか、危険な連中みたいねぇ…とりあえず、指示に従いましょ」
私達は「じゃーね!」って感じでそそくさとベンチの陰に隠れた。
そのまま、なりゆきを見守る。
「ラニ…あんた、生きてたの?」
マージが笑顔で"美少女"に問いかける。
「…生憎、今は時間がない。私も一応、kids-town(キッズタウン)の最高責任者なんだ」
"美少女"は、無表情で答える。
「さっき、しばらくは私の相手をしてもらおうかって言ったのはどこの誰よ!」
「…それは、その言葉以外にお前を気付かせる言葉が浮かばなかったから…」
「つくづく、あなたも子供ねぇ…わざわざあたしの気を引くことなんてないじゃない。あたしはただ、任務を果たしているだけよ」
マージはラニという美少女から視線を外して、
「しかも、ヤジみたいね、あそこに隠れてる子たち。異国の匂いがするんだもの」
私達のほうを見ながら言った。
「…なんか危険な感じじゃない…?」
千春が小声で訊いてくる。
そんなの分かんないよ…。
「…本当はこんなの使いたくないんだ」
ラニはなんと…背中から剣を取り出した!
「そっちがその気なら」
マージも剣をかまえる。
「な…斬り合いでもやるのか…?」
ここに至って、初めてドクタが驚きの声をあげた。
私達は、巻き添えをくらわないよう、隅で大人しくしている。
「お前を斬るつもりはないが―」
そう言って、ラニが剣を前に突き出した。
「ちょっと、時間稼ぎ」
次の瞬間―\r
私は微風を感じた。
見ると、ラニは剣を背中に戻して平然と立っている。ただ、マージの姿が見えない。
「…?」
状況が理解できない私は、立ってラニのそばまで行く。みんなもあとに続いた。
「風の決壊―それで奴はここまでこれない。しかし、マージはおそらく10分で決壊を破り、追いかけてくるはずだ。その間にkids・townまで逃げよう」
ラニはそれだけ言うと、歩き始めた。
「あのぅ…なにがなんだかサッパリなんですが」
私が訊くと、
「私の名は、ラニ・スチュランプ。ラニと呼んでくれ」
ラニは振り返ってにっこり微笑んだ。
それが、初めて見るラニの笑顔だった―。