チュンチュン
雀が鳴き部屋に朝日が差し込む。
なんかベタな朝だなぁ、千明はそう思いながらもこういうベタな朝が好きだった。
確かにいつもの朝だった。おっさんがいることを除いては、
千明の願いもむなしくおっさんは消えることはなかった。
しかも朝ご飯をつくっている。
なんとも目覚めの悪い朝だ。
「おっさん…!勝手に何やってんだよ!」
何をやっているかは予想できたが朝から少しイラついた千明は怒鳴った。
「おはようございます。朝ご飯ですよ、味噌汁と玉子焼きしかできないんですけど」
そう言って少し照れたおっさんを見て妙に腹が立った。
「朝は食べたほうがいいですよ」
おっさんは味噌汁をよそってテーブルに並べた。
千明も仕方なくテーブルの前に腰を下ろした。
白ご飯に味噌汁に、何か黒いものがテーブルに並んでいる。
「おっさん、玉子焼きは?」
口を聞きたくなかったがもしかしたらあの黒いものが玉子焼きだ、という不安をどうにかしたかった。
「え、これですよ」
おっさんは黒いものを指差した。
…やっぱりあれが玉子焼きか……
「おっさん玉子焼き作れるって言ったじゃん」
「いえ、おいしくはないですけど作れますよ」
そんなガキみたいな屁理屈を言うおっさんに千明はついに怒った。
千明は何も言わず立ち上がり制服に着替え始めた。
「おいしくないですけど朝はちゃんと食べたほうが…!」
おっさんは千明を止めたがそれを振り払って千明は部屋をでた。
千明は男の作る料理は不味いと思い込んでいる。
死んだ父親が作った料理がそうだったからだ。
トラウマになるほど不味かった。
父親はそのとき相当落ち込んでいたがまだ小学生だった千明はそんなこと分かるはずもなかった。