目の前には、歌舞伎座。
私は新調した着物に、包みを持って、またこの場所に戻ってきた。
一歩ずつ近づくごとに、あの男の姿と、抗う私が鮮明になる。
…前に、進まなければ。。「―…元気そうでなによりだな、京太郎ちゃん」
「あなた…は…」
この声は―まさか。
背筋が凍った。私はゆっくりと後ろを向いた。
「傷は大丈夫?あの時は、びっくりしたよ。僕はただ君と仲良くなりたいと思っただけなのにさ。でも、家の力ってすごいよね。君が僕のモノになるのも時間のもんだ…」
瞬間、私の中で何かが切れた。