『あぁ〜、わかったわかった。書けばいいんだろつ！』
罵声とともに、
私の手から、ノートとペンが奪い取られた。
いつもの優しい文字とは正反対に、雑で角張った文字は、その内容を物語っていた…。
≪九月三十日＼r
本日、西田 綾乃と相沢 優は別れた事を承諾します。
優 》
真っ赤な瞳の優は、
バンッ！ と
音を立てノートとペンをテーブルの上に置き、部屋を後にしようとした。
『待ってっ。』
もぉ、これ以上我慢するのは無理だと別れを決意し、言葉にしたはずの私は、とっさに優を止めていた。
ドアノブに手を乗せたまま立ち止まった優は。
一呼吸し、振り返った。
(ゆぅ…)
喉に詰まって、出てこない彼の名前。
それでも、振り返った彼の顔を見て、綾の顔に笑顔が戻ろうとした瞬間…。
『綾っ。
お前が言った事思い出してみろっ！
お前が終わらせたんだろつ！！』
バタンッ！！！
そぉ…。
自分で終わらせたんだよ…。
ポタン…ポタン…
ポタン…ポタッポタッ。
ノートの上に落ちる涙はいつしか嗚咽に変わっていた。
優と私の出会いは、一昨年の五月。
私のバイト先である居酒屋に、同僚と訪れた事から始まり、一ケ月には。私はバイト先を辞め、優と派遣に入り、派遣先の寮で一緒に暮らし始めた。
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