保護室に入れられ、一人になった純は、「出してくれ」と何度も叫んだ。 だがなんの反応も返ってこない。 純が叫び疲れ板張りの床に唯一あるピンク色のマットレスに座り込んで間もなくした頃、鍵が開く鈍いが響いた。純はだいぶ落ち着いてきていた。 鍵が開き保護室の前には、先程の看護士の一人が、白い大きな物を運んできた。それは布団類である。純は、看護士に鉄扉の横の鉄の棒の隙間から看護士に「ここから早く出してよ」と今度は普通の声音で言った。看護士は、純に「落ち着いてくれば直ぐ出れるから」と優しく言った。 純は少し安心したようだ。看護士は、今からそこに布団を敷くから出ちゃ駄目だからと鍵を開けた。純は保護室を出たい気持ちを押さえた。看護士は、素早く布団を中に運び敷いた。それは熟練された技のような素早さだった。そして直ぐ純だけ中に残して保護室を出て鉄扉に鍵をかけた。「じゃあこれを飲んで」と鉄の棒の隙間から純に薬と水の入ったコップをてわたした。 「飲むの?」と純は躊躇いがちだ。 「うん、飲んで直ぐ布団入って」看護士は、また優しく言った。 純は素直にその言葉に従った。 気ずけば、朝になっていた。純が目を覚まし、どれくらい時間が過ぎたか分からずにぼんやりしていた、その時鍵が開くあの鈍い音がした。保護室の前にきたのは、五十代ぐらいの恐面の看護士だ。 「おはよう、よく眠れたかい」恐面とはうらはらに優しい感じだ。すると看護士は、看護服のポケットから煙草を取り出し純に一本差し出した。