予感とは裏腹に龍一は『あの夢』を急に見なくなっていた。むしろ逆に朝がすがすがしい日々を送っていた。「気味が悪いィなぁ」と最初は思っていたが、一ヵ月もたつと『あの夢』の事さえあまり思い出さなくなっていた。
そしてある日・・・
(あ〜疲れた・・・。)龍一は学校の野球部の練習の帰り、へとへとになりながら電車に乗った。時計は七時を回り、空もだいぶ暗くなっていた。
(あんの鬼コーチめ・・・練習させすぎなんだよ。)心の中でぐちをこぼす。
疲れた首をふり車内を見回した、車内に人は少なく席はがら空きだった。龍一は適当に席を選びドカッと腰掛けた。間もなく車内アナウンスが流れ、電車は動きだした。「疲れた・・・ねむ・・」家に帰るまでの数十分の間に龍一はしばらく眠ることにした。
龍一はふと目を覚した。「ん・・・」電車は止まっていた。急いで窓の外を見る、電車は学校のそばの駅と龍一の家のそばの駅とのちょうど中間あたりの駅に止まっていた。(まだここか・・・もう少し寝よ・・・)そう思い、龍一はまた眠りについた。そのときまだ龍一は気付いていなかった。自分を取り巻く明らかな『異変』に・・・。