目を覚ましたとき、俺は人垣の中心にいた。
『お、目覚めたぞ!』
『うわ〜!綺麗な黒眼だなぁ・・・』
『どこから来たんだ!?』
口々に俺に話し掛けてきているが・・・何語だ?
ってか、こいつ等・・・
俺は一体、何処に迷いこんじまったんだ?
「何じゃ、近頃の若い者は、助けられても礼一つ言えんのかいな?」
不意に人垣の向こうから判る言葉、『日本語』が聞こえてきた。
人垣が割れ、その向こうに現れたのは黒眼黒髪、背は低めだが、がっちりした身体、しかも和服?
「あんたは、日本人・・・なのか?」
「やはり、ヌシも日本人か!」
平賀 伊衛郎と名乗ったこの男の話は俺を驚かせるものばかりだった。
「・・・つまり、ここは日本どころか、地球ですらない。と?」
「地球に耳や尻尾がある人間がおるか?」
そう、ここの住人には猫のような耳と尻尾がある
「猫だけじゃないぞ?犬みたいな奴らもおるし、鳥の羽をつけとる奴らもおる。儂ゃ見た事なかが、魚の尾や蝙蝠の羽のある連中もおるそうじゃ」
・・・鳥と蝙蝠は天使と悪魔では?
「儂がここに来たのは三年前、明治十年、二十歳の頃じゃ。」
「明治!?まさかだろ!100年近く前だぜ!?てか今23才!?10年位サバ読んでない?」
「・・・老け顔じゃ。
ここに飛ばされてきた連中は時代も土地もバラバラじゃった。
他に会ったんは伴天連の坊さんに・・・インデアン?それから宇宙船とか言う船の船乗りに・・・」
「まて!ちょっと待て!なんか、さらっと凄いの出なかった!?宇宙船て?未来人?ファンタジーがSFになってねぇ?」
「詳しくは知らん。が、そう言っとった。・・・『ふぁんたじい』とか『えすえふ』って何じゃ?」
ああ、俺、どんなお伽話の世界にいるんだよ
『おい、イエロー』
後ろで俺と伊衛郎の話を聞いていた筋肉質な親父が話しかけて来た
「いかん、日本語じゃ村長達にはわからんか。ちょいと話してくる」
伊衛郎がオッサン達と話している間、子供達が遠目に俺を観てるのに気付いた
この種族の特徴なのか、みんな真っ赤な髪をしている。真っ赤な・・・炎みたいな・・・
「伊衛郎・・・俺を助けたのは・・・ここの子供か?」
気を失う前、見た炎を纏った少年、あれは真紅の髪の・・・
「今呼んじょる。本人に礼ば言わなな?」