「ひっどいネグセ。座りなよ、直してあげる」
フランカはそっと俺の髪に触れた。
「触るな」
俺はフランカの手を払いのけ、目をそらした。フランカはぷぅっとむくれていった。
「そんなに嫌わなくてもいいじゃない」
「嫌いなわけでは…」
俺はそう言いかけてやめた。このままでは会話がなかなか終わらない。
俺は、フランカが苦手だ。確かに嫌いではないが、フランカがそばにいるとどうも落ち着かない。それは彼女がいつもニコニコしていて腹の底が読めないというのもあるが、そもそも、フランカはここに今生きているどんな人間とも異なる雰囲気をしている。彼女も工作員である以上、闇を垣間見ていないはずはないのに、何故彼女の深い碧眼はくすんでいないのか。全くわからない。
「ダンテ?どうしたの、突然ボーッとして」
フランカは顔を近づけて俺の目をのぞきこんだ。