そして、学校までの道を記した地図をなくしてしまった。
落としたのか、公園のベンチに置いてきたのか、まさかゴミといっしょにくずカゴに捨ててしまったのか…とにかく気付いたら持っていたはずの地図がなくなっていたのだ。
鳥花は迷った。
捜しに戻るべきか?
迷った挙句…“先に進む”という最悪の選択をしてしまった。
地図に描かれた道はわりと単純だった。
そして鳥花は自分の記憶力と方向感覚に自信があった。
故に鳥花は「なんとかなるだろう」という安易な気持で先に進んでしまったのだ。
マズイと思った時にはもう遅かった。
既にきた道さえもわからない。
山と畑に囲まれて育った鳥花には、都会の建物や道はどれも似たように見えてしまう。
更にこの町は非常に起伏が激しい。
ビルや山を目印にしても坂を下れば見えなくなってしまう。
腕時計を見ると、まもなく8時30分になろうとしていた。
完全に遅刻だ。
どころか果たして辿り着けるのか、逆にマンションまで帰れるのか…。
初めての土地でひとり道に迷い、段々と不安になってきた。
「……どうするか…。」
学校では時間になっても着かない事に心配してるかもしれない。