case‐ヒカル
黄昏どき、河川敷
「お嬢ちゃん、ずいぶん沢山の猫たちとお友達なんだね」
初老の男が腰をかがめ、野良猫達と無邪気にたわむれる娘、日浦ヒカルに笑顔を見せた。
男の左右には、一見してそれと分かるボディガードが控えている。
少し離れた場所に、完全防弾処理の施されたリムジンが停まっている。
男は、子供や動物が好きな様子だった。
「おじちゃん、鬼塚源三郎さんだよね?」
「あれ?何でおじちゃんの名前を知ってるんだい?」
言い終えた鬼塚の首が、訝しげな表情のまま、ゴロンと転がり落ちていく。
時を置かず、左右を固めていたボディガード達の首から吹き出した血潮が、川原の砂利を黒っぽく染めていく。
「この瞬間を待ってたんだよね」
瞬く間に三名の命を奪った日浦ヒカルは、両手に持っていたカランビット(東南アジアの武器)をケースに収めた後、琥珀色の瞳を薄闇にきらめかせていた。