「ははははははははははははははははははははははははは」
彼はA型だった。A型の血液が飽きたなんて嘘も良いとこ。
美味しい! 新鮮で生温い血液はやっぱり違う。全然違う!!
何型なんて問題じゃない。問題は新鮮か否か。体外から出て30分以内の鮮血が好ましい。
「ははははははははははは」
あんなに重かった身体が羽根のように軽い。
昨日爪を切って貰った筈なのにこんなに細く長く鋭利に伸びてしまっている。
歯……、歯がおかしい。上と下が噛み合わない。
「はははははははは……………はぁ―――――――」
笑い疲れた。
そう言えば、彼は、誰だっけ?
ミイラのように干からびてしまった彼を見る。
「…………………」
私を気にかけてくれた彼
私を愛してくれた彼
だから愛してあげた
身体を求められたら捧げてあげたし、こちらから誘ってあげたりもした。
彼は私の何だったっけ?
「あはははは、もう死んでしまったし、いっか別に」
脳がこれ以上の詮索を嫌がる
きっと彼が誰だったのか、何故彼が持って来た血液と彼の血液が全く同じ味だったのか。
知ると頭がコワレテシマウ
「まだ足りない………」
気付けばもう夜だ
私は何時間かけて彼を貪っていたのか、一体何時間笑い続けていたのか。
「濃い血が飲みたい……! 年端もいかない子供のが良い……」
自分の身体をきつく抱きしめる
さっきから昂揚しっぱなしで治まらない。
鼓動が激しい。
凄く淫らな気分……
あはは、そうだ。昔の自分もきっとこうだった筈―――――\r
ここは街から遠く離れた民家
山の中枢。近所に人は無し。
中には一人、男が死んでいる。
元は白かったこの真っ赤な部屋にその男がひとり。
宿主はいない。もうここには帰って来ない。
街の人々は吸血鬼に怯える
今夜も甘い誘惑を餌に吸血鬼が街を血に染める
きっと遠からずこの街はゴーストタウンに――――…………
END